第4回 藤本 彰 スラントノーズを命名


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藤本 彰

藤本 彰氏 プロフィール
Fujimoto akira
■1937年生まれ 大分出身
1959年、三栄書房美術部入社。テクニカル・イラストレーションを学び、美術部主査となる。1969年オートスポーツ編集長、1972年よりCAR STYLINGを企画創刊し、編集長に就任。1979年、株式会社カースタイリング出版を設立。以後、国際カーデザイン・コンペティション、日本カーデザイン大賞などを主催。またフランス最大のコンクールデレガンス"Louis Vuitton Classic"、カナダ国際オートショー主催ワールド・カーデザイン・コンペティション、東京オートサロン国際カスタムカーコンテストなどの審査員を務めている。

 
和製英語が世界に
 

露木:藤本さんは「カースタイリング」の編集長でもあり、この「大車林」の編集委員もお努めになりました。おもにデザインを担当されたとうかがっていますが。

藤本:デザインのところは私の専門の分野でしたので、一手に引き受けました(笑い)。

露木:ああ、そうですか。デザインの用語というのは、われわれ生半可な知識で使っている場合が多いということが、「大車林」を見てわかりましたね。あらためて…(笑い)。

藤本:もともとは英語圏の言葉が多いのですが、長ったらしい英文(の用語)を日本人は短くしたがるのが、たとえば、インスツルメントパネルをインパネと言ってみたり、そういう言葉が、だんだんと普及していってしまうものですから、書く側とすれば、どこまで正しくやるべきかが難しいところでした。

露木:これはインパネで引いても、インスツルメントパネルで引いても、両方出てきますよね。

藤本:そのようになっています。

露木:その点で非常に便利だし、あらためて、言葉というものがこういう意味だったのかということを知るようなことがあるのですが、デザイン関係ですと、新しい言葉がどんどん出てきますよね。

 

 

 

藤本:本当にどんどん出てきます。デザインは当然、新しいことを提案しなければ意味がないということもあるのですが、考えたときに、良い言葉がないということで悩むことが多いんです。

露木:たとえば、どんなところでお悩みになりました?

藤本:そうですね。スタイリングの名称で、私が印象的だったのは、今はスラントノーズと言えば、だいたいわかるのですが、あの当時、グリルを少し後ろに寝かせて空力特性を良くしようという発想があったんです。

露木:フロントを斜めにして…。

藤本:そうすると、風の当たりの抵抗が少なくなるということから始まったのですが、それを何と呼ぶかが誰も考えつかなかったんです。上向きグリルだとか、前側に流れ落ちるノーズとかいうような表現をアメリカではしたのですが、ヨーロッパでも名付ける人がいなくて、私どもは(カーデザインの)専門誌ですので、何かかっこいい言葉で表現したいと悩んだあげくに、勝手にスラントノーズと付けたわけです。

露木:なるほど。じゃあ、和製英語なんですか?

藤本:実際には和製英語です。理屈で考えれば、スラントというのは傾きですから、(その傾きが)どちらでも良いわけですが、短い言葉だったせいで、だんだん浸透してしまって、今では世界でもわかるんですね。

露木:そういうことがあるのですね。そうですか。

 

日本車でのスラントノーズの走りであるコロナ

 

 

藤本:ひょっとすると用法としては間違っているのかもしれませんが、「通用してしまえば勝ち」ですから(笑い)。それは良い方なんですが、間違った例としては、カウンタックという有名なクルマがありますが、外国でカウンタックと言っても誰もわからないんです。

露木:そうなんですか?

藤本:ええ、日本だけで通用している車名です。

露木:発音が違うのですか?

藤本:もともとはイタリアのトスカーナ地方の方言で「クンタッチ」で、「びっくりしたなあ」という意味なんですが、それを英語読みしたのか、日本のジャーナリストが、うちでもそうですが、「カウンタック」と付けちゃったんですね。

露木:これで通用しちゃってますものね。

藤本:日本中、それで通用しています。日本語のわかるアメリカ人のジャーナリストから「なんでカウンタックと書いてあるんだ」と責められましたよ。正しくないじゃないかということで。今は「カースタイリング」では「クンタッチ」と呼んでいます。


 
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